メルク製の新型コロナ経口治療薬が特例承認されましたが日本感染症学会ガイドラインによると、この薬はウイルスRNAの配列に変異を導入しウイルスの増殖を阻害する機序があるようです。
日本を含む20か国で重症化リスクのある非重症患者(目標症例数 1,550 例)の外来治療を対象にした臨床試験では目標症例数の50%が投与29日目を完了した時点で行うことと事前に計画されていた中間解析において、発症5日以内の治療開始で偽薬群(377 名)の重症化が53名(14.1%)に対し、治療群(385 名)では28名(7.3%)と相対的リスクが48%減少し、この結果を受け中間解析以降の被験者登録が中止されています。
組み入れられたすべての被験者(1,433 名)を対象とした解析の結果においては発症5日以内の治療開始で偽薬群(699 名)の重症化が68名(9.7%)に対し、治療群(709 名)では48名(6.8%)と相対的リスクが 30%減少し、死亡例は治療群で1名(0.1%)に対して、プラセボ群では9名(1.3%)と治療群で少なかったとされています。
中間解析時点で偽薬群、治療群でたったの762人にしか投与されていない時点で相対リスクが48%減少したため被験者登録が中止されましたが、全ての被験者を対象として解析すると相対リスクの減少は30%に落ちているため、被験者を増やしていけばどんどん相対リスクが下がって有効性が認められないという結果に達したかもしれませんが、たった1500人程度の被験者で有効性を論じて良いんでしょうか?
ファイザー製ワクチンの有効性を論じた時の統計のミスリードと同じで、偽薬群でも90.3%の人が重症化していないという事で有効性はあまり期待できないと判断するべきではないでしょうか?
通常、薬剤は数年かけて安全性・有効性を確認してから実用化されますが、感染者に対して使用するためワクチンよりも危険は低いかもしれませんが、同様に安全性・有効性は確立していないため将来的にどんな副作用が出るか分かりません。
投与は重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に限られているようですが、重症化を恐れて重症化リスク因子が無くても投与されるケースが出てくることが危惧されます。
イベルメクチンに期待する声をよく聞きますが、イベルメクチンは既に市販されている薬剤ですのでまだ安全かもしれませんし、初期に有効性が議論されていたアジスロマイシンと同じマクロライド系抗菌剤で、マクロライド系抗菌剤は単なる抗菌剤ではなく免疫調整・抗炎症作用があります。
イベルメクチンは蛋白質を細胞核の中に運び込む役割を担う輸送蛋白質であるインポーチンを阻害してHIVやデング熱ウイルスを阻害するという報告があり、新型コロナの阻害も期待できるかもしれませんが新型コロナに関しては治験中で有効性は確立しておらず、どんな薬剤も副作用が出る可能性あるためむやみに使用するべきではないと考えます。
メルク製の新型コロナ経口治療薬はフランスでは有効性が確立していないため発注が取り消され、ファイザー製の経口薬に切り替えるようですが、そもそも新型コロナはそれほど恐れるウイルスではなくオミクロン株に至っては従来のコロナと同じぐらいに弱毒していますし、ワクチンも治療薬も必要なウイルスではありません。
感染すると血管内皮細胞のACE2機能不全を起こし血栓形成・血管炎を起こして重症化する可能性が考えられますので対症療法として抗凝固療法を行うだけで十分だと考えます。
青魚などに含まれているDHA・EPAや亜麻仁油や荏胡麻湯などに含まれるω3脂肪酸は中性脂肪を下げ、血液をサラサラにする効果があるので、当クリニックでは新型コロナ抗原定性陽性者にはEPA製剤を処方することがあります。
普段から食品やサプリメントでEPA・DHA・ω3脂肪酸を摂取しているだけで中性脂肪の上昇を抑えるだけではなく新型コロナの重症化リスクを下げる可能性が考えられ、安全に使用できると思われます。