2022年に甲南医療センターの専攻医が自殺し、非常に残念に思いますが、労災認定され損害賠償請求の訴訟が始まっていますが、根本的な原因は今の研修医制度に問題があると思っています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/de4c8c14707449560a75c1896ccd1a47db7f21fe

戦前、医学部は4年制で、臨床実習は無く講義を受けただけで卒業すると自動的に医師免許がもらえたようです。

戦時中は軍医・医師不足から医学専門学校が急増設され、戦後に臨床実習も資格試験もなく医師に成れるのは問題という事でGHQの指導で医学部卒業後1年間の臨床実習(インターン)を行った後に国家試験を行い、合格者だけに医師免許が与えられる制度に変わりました。

インターン期間は医師免許が無いにも関わらず医療行為を行うため、無資格診療となり医療事故の責任所在も明確ではなく、インターン生は無給であったため、東大医学部のインターン生らが「医師国家試験ボイコット運動」を蜂起し、契機に東大紛争が勃発し、1968年にインターン制度が廃止されました。

在学中に臨床実習を行うために医学部が6年制になり、卒業後は直ぐに国家試験を受ける事ができ、合格すれば希望する診療科の医師として働き給料も得られるようになりました。

しかし研修医は薄給のためバイトをしないと生活ができませんでしたが、バイト先でも色々と経験を積むことができました。

毎年、医師国家試験を合格して新たに数千人の医師が誕生するので医師が過剰になると考えられ、医学部の定員を減らすという議論も出てきていましたが、当直中の研修医が亡くなるという事件が起き、これが過労死の可能性があると考えられ、研修医が薄給のため当直を行うのは研修に専念できず、身体の負担も大きく、自分の専門領域以外でも医師として最低限の診療ができるようになるには、臨床研修の中で内科・外科など基本的な科の診療を一通り経験することが必要だと考えられるようになり、2000年に医師法がされ、2004年から現行のマッチングシステムを伴う新医師臨床研修制度がスタートしました。

新医師臨床研修は、①医師としての人格の涵養、②プライマリ・ケアへの理解を深め患者を全人的に診ることができる基本的な診療能力を修得、③アルバイトせずに研修に専念できる環境整備を基本三原則とし、内科・外科に留まらず多くの診療科が必修となり、アルバイトも禁止となりましたが、その分、給料は補償されるようになりました。

それまでは国家試験に合格するとほとんどが大学病院の医局に研修医として所属し、医局は派遣会社のような役割をしていましたが、医局員が十分に居るので地方の病院にも医師を派遣できていました。

マッチング制度では大学病院以外の基幹病院が研修医を募集し、研修医の希望とマッチするとその病院で働く事になりますが、今どきの若者が不便な地方を希望する事は少なく、どうしても都会に集中し、基幹病院に研修医を奪われて大学の医局は人員不足になり、地方の病院に医師を派遣できなくなり、地方の病院での医師不足が深刻になり、それまでは医師が過剰で医学部の定員を減らすという議論が出ていたのに、いきなり医師不足と言われるようになりました。

以前の研修医制度でもゆとり世代は先輩から食事を誘っても説教されると思って断る事が多かったですが、直ぐに自分のやりたい診療科で診療できていました。

今の研修医制度になってからは再び学生の時の臨床実習と同じようにいくつかの診療科を回る事になりましたが、自分の希望しない診療科には興味を示さない研修医も多く、残業もさせられないので研修医は17時になれば帰りますが、17時以降は指導医が居残って仕事をしなければならないという捻じれ構造も作りました。

残業を強制はできませんが、本人の希望であれば居残ったり当直する事も可能ですが、指導と思って言った事もパワハラだと言う研修医も居て、指導医も強く言えないというのが現実です。

全て研修医の資質によりますが、研修医期間は研修医の権利として9~17時までの勤務だけをこなすだけの者も居ると思いますが、自身の研鑽のために17時以降も居残っていた者も居ると思います。

今回自殺した専攻医が研修医をどのように過ごしてきたか分かりませんが、3月までは17時で帰っても文句を言われなかったのに、4月に専攻医になると突然、17時に帰る事が許されず、仕事量も増えたと思われます。

学会の準備も以前であれば研修医時代からしていましたが突然、専攻医になってから仕事のリズムが変わったにも関わらず学会の準備にまで追い回され、専門医資格取得のための研修プログラムまで与えられ、許容をオーバーしてしまい自殺に及んでしまったと推測されます。

病院側には専攻医になって直ぐに本人の能力を考えずに学会の準備や専門医資格取得のための研修プログラムを与えたことは大きな問題と思いますが、そもそもは現在の研修医制度の問題があり、何とかしないと同じような犠牲者が出る可能性があり、全ては制度を決めている厚労省に大きな責任があると思われ、厚労省が医療崩壊を作っているとも言えます。