米国・ミネソタ大学で30~85歳で、過体重または肥満の被験者を対象にSARS-CoV-2感染確認から3日以内、発症から7日以内の外来成人患者に対し、メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミン3種の薬剤のドラッグ・リパーパシングとして、COVID-19の重症化予防効果を第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で検証しました。
主要エンドポイントは、低酸素血症(自宅測定での酸素飽和度≦93%)、救急外来受診、入院、死亡の複合とし、合計1,431例が無作為化を受け、主要解析は1,323例を対象に行われ、被験者は年齢中央値46歳、56%が女性(うち6%が妊婦)で、52%がワクチン接種歴ありでした。
事前に規定した副次解析において、救急外来受診、入院、死亡に関する補正後オッズ比は、メトホルミン群0.58(95%CI:0.35~0.94)、イベルメクチン群1.39(0.72~2.69)、フルボキサミン群1.17(0.57~2.40)で、入院または死亡に関するオッズ比は、それぞれ0.47(0.20~1.11)、0.73(0.19~2.77)、1.11(0.33~3.76)でした。
この結果を踏まえて「過体重/肥満の成人患者を対象に行った今回の無作為化試験では、検討した3剤は、主要複合イベントをいずれも予防できなかった。事前規定の副次解析において、メトホルミンは救急外来受診、入院、死亡を減らす可能性があることが示唆されたが、3剤ともそれぞれマッチさせたプラセボ投与よりも、重症度が低かった薬剤はなかった」とまとめています。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2201662
南アフリカでは「信頼できるデータが無い」として本年6月にイベルメクチンの使用中止を発表しています。
日本ではイベルメクチンを妄信する人が多く、イベルメクチンを飲んで直ぐに解熱したなどの投稿を目にする事がありますが、イベルメクチンを飲まなくても解熱した可能性が考えられるので単なる個人の見解です。
イベルメクチンは一般には寄生虫の薬と言われていますが、実際にはマクロライド系抗菌剤で、マクロライド系抗菌剤は単なる抗菌剤ではなく免疫調整・抗炎症作用があります。
イベルメクチンは蛋白質を細胞核の中に運び込む役割を担う輸送蛋白質であるインポーチンを阻害するためSARS-CoV-2の阻害も期待できるかもしれませんが、どんな薬剤も副作用が出る可能性があり、実際にイベルメクチンを妄信したために他の治療の開始が遅れて重症化したという話も耳にし、COVID19に関しては治験中で有効性は確立していないため当クリニックでは比較対象としてもこれまでイベルメクチンの処方は全くしてませんでした。
そもそもCOVID19は重症化するのはほとんどが糖尿病など免疫が下がる方かACE2活性の上る肥満者で、死亡するのはほとんどが寿命で、ACE2活性の低い子供では滅多な事では重症化・死亡しないワクチンも治療薬も要らない疾患ですので、発熱、咳など感染症が疑われる人は自主的に自宅療養し、消化の良い物を食べ、塩分・水分をしっかり摂って安静にしていれば基本的には数日で回復しますので、受診する必要もありません。