新型コロナウイルスワクチンの副反応の説明の際に子宮頸がんワクチンを例に挙げましたが、疑問に感じた方も居られると思いますので改めて解説します。
子宮頸がんの95%以上はヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症しますが、性交渉によって女性は感染します。
日本では13歳年度から予防接種が開始になりますが、接種前に性行為がありHPVに感染していれば、残念ながら予防接種の効果は期待できないかもしれません。
子宮頸がんワクチンは遺伝子組み換え技術で感染力の無い擬似ウイルスを作り、それを接種して免疫を付ける事で感染を予防します。
新型コロナウイルスワクチンはmRNAを接種して体の中で擬似ウイルスを作らせますので接種した人の遺伝子が書き換えられる危険がありますが、子宮頸がんワクチンは接種した人の遺伝子には作用しないので似ているようで全く違います。
子宮頸がんワクチンの副反応としてよく耳にするのは痙攣などの症状ですが、これを自己免疫性脳炎やHPVワクチン接種後神経障害としての報告もあり、実際にそういう事例もあると思いますが、ほとんどは心因性だったとされています。
日本では年間約1万人が子宮頸がんに罹患し約2800人が亡くなっています。
もちろん子宮頸がんワクチンを接種しなかったからと言って必ずしも子宮頸がんに罹患するわけではありませんが、接種することで罹患するリスクが抑えられます。
ワクチンによる重篤な副反応は日本産科婦人科学会のHPに発生数自体が少なく発生頻度は不明と書かれてあり、はっきりしません。
不幸にも重篤な副反応が出た方に関しては国が全力で救済するべきで、稀に起きる重篤な副反応のために全面的な接種中止は問題があると思います。
結局は将来、子宮頸がんに罹患するリスクと重篤な副反応が出るリスクを考えて接種するかどうか各々が判断する必要がありますが、当クリニックは子宮頸がんに罹患するリスクの方が高いと考えて、比較的推奨の立場を取っています。
HPVは男性でも肛門がん、陰茎がん、中咽頭がん、尖圭コンジローマなどの原因になっていて日本でも適応が男性にも拡がりました。
女性は性交渉でHPV感染するという事は男性から感染させられたとも言え、子宮頸がんワクチンの負担を女性だけに負わせるのではなく男性も接種することで子宮頸がんだけではなく肛門がん、陰茎がん、中咽頭がん、尖圭コンジローマなどの抑制に繋がるのではないかと考えています。
女性は公費負担で無料で接種できますが、男性は任意接種で有料になりますのでなかなか男性への接種は普及しないと思いますが、今後の課題だと思います。