志村けんさんや岡江久美子さんが新型コロナウイルス感染症で入院された時にご家族が傍に付き添う事ができずガラス越しでの対面しか許されず、亡くなってからもご遺体に対面できなかったと報道されたことを覚えておられる方も居ると思います。

厚労省から「医療機関等は、遺体が新型コロナウイルス感染症の病原体に汚染され又は汚染された疑いのある場合、感染拡大防止の観点から、遺体の搬送作業及び火葬作業に従事する者にその旨の伝達を徹底して下さい。」という通達があり、新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドラインが決められています。

その中のQ&Aで「死後に細胞が死ぬことを考えると、死後にウイルス増殖が著しく減少することは明らかなことと思われますが、遺体が接触感染以外に感染能力がないこと、もしくは死後感染力が著しく減少することの、科学的根拠はありますか。」とい問いに対し

「これまでに通常の遺体の取扱いにおいて、遺体から新型コロナウイルスに感染した事例の報告はなく、遺体からの感染の可能性は低いと考えられます。

新型コロナウイルス感染症は呼吸器感染症であり、呼吸によりウイルスが患者体外に放出されます。

遺体では、生命活動(呼吸、くしゃみや発語等)の停止に伴いウイルスの体外放出が止まり飛沫感染のリスクは極めて低くなります。

一方で、体外に排出されたウイルスが環境中で一定期間感染性を保つことが報告されていることから (ウイルスは細胞の外では増殖できません)、死後にウイルスが増殖しなくとも患者体内には感染力を保ったウイルスが一定期間存在していると考えられます。

感染力を持ったウイルスは便等、呼吸器以外の体液にも存在することが報告されており、遺体 (特に体液)からの接触感染のリスクに対する防御が必要です。

接触感染は、ウイルス汚染部を触れた手指で目や鼻腔、口腔等の粘膜を触れることにより成立しますので、 手袋を装着していたとしても汚染された手袋で人や周囲環境に触れる行為は感染の原因となります。

よって、手袋装着時は、人や周囲環境に触れないように注意することと、手袋を外した後は手指衛生を徹底してください。」

と返答されています。

ウイルスは宿主が居ないと生存できないので宿主が亡くなると当然、ウイルスも死滅しますが細胞に水分が残っていれば一定期間は生存していると思われます。

しかし亡くなると体液は一切、出ませんのでウイルスが身体の外に出てくることはありません。

百歩譲ってご遺体に付着して生存しているウイルスによる接触感染が起きるにしても、手袋の有無に関わらずご遺体に触れた後はどこにも触れずに手洗いをする事で何の問題もありませんが、非透過性納体袋に収容することを推奨され、実際に非透過性納体袋に収容されてご遺体と接することができなくなっています。

少し話が逸れますが、汚染された手袋で人や周囲環境に触れる事で接触感染の原因になると記載されていますが、実際の医療機関では手袋をしていると自分は守られているという錯覚から不要に色々な所を触っている姿はよく見受けられ、それが院内感染の原因になっていて、意識が低い医療従事者が多いために院内感染が起きています。

厚労省が「遺体が新型コロナウイルス感染症の病原体に汚染され又は汚染された疑い」と表現している事もご遺体が汚い物であるかのような印象を与えてしまうので不快感を覚えます。

このガイドラインは昨年7/29に発行されていますので、志村けんさんの場合はガイドラインができる前でしたので、ご家族は亡くなった時にも立ち会えず、霊安室でも対面できず、火葬場にも同行できず、遺骨を受け取るだけという悲劇が起きてしまいました。

岡江久美子さんもガイドラインができる前に亡くなっていますが、臨終の際も夫の大和田獏さんですら付き添えずにガラス越しに顔を見る事しかできず、娘さんも亡くなる前は面会ができず亡くなった4日後に遺骨を受けたられただけでした。

芸能人で交友関係も広いため葬儀を行えば多くの人が集まる事が予想され、感染拡大を配慮して1/8付の記事ではいまだに納骨も葬儀も行われていないようです。

新型コロナウイルス感染症対策としてほとんどの医療機関、施設などでは面会制限がされていて、それは新型コロナウイルス感染症患者だけではなく全ての患者さんに対してです。

癌の末期や他の疾患でも亡くなる方は当然、居られますが面会制限のためにご家族に見守られながら最期を迎えられなくなっています。

先日、90代の新型コロナウイルス感染者が自宅療養中に急変して亡くなった事がニュースになりましたが、その人は何度も入院を勧められたにも関わらず自宅療養を希望されていたようで、自分で自宅で亡くなる事を選択されたのに、何の問題があるんでしょうか?

人間はどういう産まれ方をするかは決められませんが、どういう最期を迎えるかはある程度、自分で選択することはできます。

何らかの症状があって医療機関を受診し、入院になってしまって不幸にも亡くなられた場合、ご家族が最期を看取る事ができなくなりますし、特に新型コロナウイルスPCR陽性と判定された場合は他の原因で亡くなったとしても新型コロナウイルス感染者と同じ対応をされてしまいます。

高齢の方で積極的治療を希望しない方は何か症状があっても受診せずに自宅で様子を観て、不幸にも症状が悪化して亡くなられたとしても、ご家族に見守られながら最期を迎える事ができます。

癌の末期で緩和ケアされている方も入院してしまうと同じようにご家族に見守られながら最期を迎える事ができなくなるので、ご自宅で過ごされることをお勧めします。

いずれのケースでも亡くなってから届けると異状死体と扱われて警察に届けられて行政解剖が行われてしまう事もありますので、必ず亡くなる前に往診に来てもらって下さい。

新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン